アメリカの葬儀

石屋の正

2010年08月12日 22:54

アメリカの葬儀業界は今から三十年程前に、

強い消費者運動の洗礼を受けたことで事業の近代化と

社会的地位の向上が図られました。













消費者ニーズの多様化に伴い、

アメリカのフューネラル・ビジネスは存命段階での

顧客獲得から遺体の処置、葬儀、埋葬までのトータル産業を目指しています。







 
"葬"を科学し、遺族の混乱を和らげる

オハイオ州にあるシンシナティ葬儀科学大学は

一八八二年エンバーミング学校として創立された由緒あるカレッジです。












広大な敷地にある、シンシナティ葬儀科学大学

エンバーミングとは遺体に対する消毒・防腐・復元・化粧の処置の総称で、

アメリカでは一般的に行われています。


アメリカで葬儀業を営むためには通常、

葬儀ディレクターの資格とエンバーマーの資格の両方が要求されますので、

学ばなければならない領域は多岐にわたります。


ですから、ここは「葬儀エンジニアの養成学校」といっていいでしょう。




以下のような講座が設けられています。


◆ 葬儀ディレクターとして必要とされる講座

葬儀史/葬儀マネジメント/葬儀ディレクション/

葬儀マーケティング/死生学/死の社会学/悲嘆の心理学/

カウンセリング/プレニード/資金調達と価格決定/法学/他



◆ エンバーマーとして必要とされる講座

エンバーミング理論/解剖学/遺体修復技術/葬儀化学/病理学/細菌学/他




大学内にある図書館。

死や葬儀に関する専門書が

収蔵されている。

遺体修復技術の講義で使用する頭蓋骨模型。

学生はリアルな模型を用いることにより

実践技術を体得する。





 
送る人、送られる人が心地よい、楽園空間での別れ

かつてアメリカで墓地といえば教会に付属した墓地を意味していましたが、

今日では、葬儀業者の経営による新しい公園墓地が作られ、

葬儀を教会で行うのは全体の5%程度になっています。

最近の公園墓地には噴水や彫刻が並び、

中には7千本ものバラの花が咲いているところもあります。

また、葬儀は墓地内のフューネラル・ホームで行われます。

フューネラル・ホームとは日本の斎場に近い施設で、

チャペルや告別ホール、面談室、事務室、葬具展示室などが備わっています。

フューネラル・ホームの式場室内には太陽の光、水、木の緑が取り入れられ、

自然の中にたたずむかのような、開放的で心なごむ空間になっています。













 
愛情が合理的でクリエイティブな葬儀を生む

アメリカには香奠の習慣がありません。

日本の互助会のようなシステムも存在しないので、

生前に契約し自らの葬儀を準備する葬儀保険がビッグビジネスになっています。

契約者は葬儀ディレクターと相談し、自分の葬儀の細部、

花やドレスに至るまでを決めます。


アメリカ葬儀産業の様々なシステムには単に合理的という言葉だけでは

片づけられないものがあります。

その根底にある、葬儀を明るく前向きに受け止めようとする意志、

そして故人を想う心や、残された者を想う心ゆえに、

葬儀を納得いくまでデザインしようとする意識には学ぶべき点も多いのではないでしょうか。









参考資料

葬祭研究所









ホームページ公開中

http://ameku148.com

【天久石材店】








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