チベットの葬儀
厳しい自然環境と調和するチベットの鳥葬
自然環境が違えば、人々の考え方も異なり、弔い方も違います。
今回は、鳥葬で知られるチベットの葬儀についてご紹介します。
鳥葬のほかにも、 さまざまな葬儀がある
どこまでも続く空と平原、ゆったりと草を食むヤク、
そして信仰の篤い人々。
"世界の屋根"と呼ばれるチベットは、
平均高度が東部で約三千メートル、
西部では約五千メートルにも及ぶ広大な高原地帯です。
聖山カイラスに向かって立つ
タルチョ(祈祷旗) そんなチベットの地に、
いまも息づいているのが鳥葬。
遺体を鳥に食べさせるもので、
人々にとって最も一般的な葬儀です。
チベットにはその他にも葬儀の方法があり、
伝染病で死んだ人や犯罪者は土葬に、
貧しい人や幼児などは火葬に、
高名な僧や貴族、学者は火葬に付されます。
また、ダライ・ラマのようにミイラにして祀られる塔葬もあります。
魂が離れた肉体だからこそ
では、実際に鳥葬はどのように行われるのでしょう。
まず、遺体は住み慣れた家に安置され、
僧侶の読経によって、魂が肉体から解き放たれます。
興味深いのは、四十九日までの期間、
決して人々が故人の名前を口にしないこと。
特に死後七日間はまだ魂が遺族の周りにいるので、
せっかくこれから彼方へ渡り、次の生に転生しようとしているのに、
その名前を呼んでしまっては、呼び戻すことになってしまうと考えるのです。
鳥葬は、一般的に、死後二、三日から一週間後に行われます。
その前夜には、僧侶とともに遺族も夜を徹してお経を唱え、
早朝、葬列が出発します。
僧侶の人数は、普通十人くらい。
多いと百人を超えることもあります。
遺族は何万個もの灯明をあげ貧しい人々に施しをします。
魂が離れ、単なる肉の魂となった遺体は、
鳥葬場に運ばれ、天葬師と呼ばれる遺体の処理をする人によって、
分解されます。
そして、大きな岩、鳥葬台の上に置かれ、
聖なる鳥、ハゲタカによってついばまれるのです。
鳥とともに、高く舞い上がって
日本人から見るとやや残酷にも思える鳥葬も、
もちろんチベットの人々にとっては実に自然なこと。
魂のなくなった肉体を他の生物に布施し、
鳥とともに空高く舞い上がり、天に還る。
だからこそ、鳥葬は天葬と呼ばれ、遺体を扱う人を天葬師と言うのでしょう。
また、鳥葬はチベットの自然条件にも合っています。
特に中央チベットから西チベットにかけては、
樹木が乏しく、火葬にするための燃料が不足していますし、
岩場や凍土も多いので、土葬にも向かないからです。
大きく、厳しく、そして美しい自然。
そのなかで、日々暮らしているチベットの人々にとって、
死とは何か、生とは何か。
自然の一部である自らの肉体を生物への施し物とし、
魂は再び生まれ変わると信じる。
その大らかさ、潔さ。それは、どこかチベットの広大な風景とも似ているのかしれません。
参考資料
葬祭研究所
ホームページ公開中
http://ameku148.com
【天久石材店】
【沖縄一の安さを目指す】
関連記事